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基本方針

 生態工学会長就任挨拶    

東京大学
大学院農学生命科学研究科・農学部 教授 
大政謙次

 生態工学会の前身であるCELSS研究会が、近藤次郎初代会長のもとに正式に発足してから早いもので、今年で21年目になります。その間、不破敬一郎、相賀一郎、新田慶治、玉浦 裕歴代会長のもとに、有人宇宙活動や月面・火星での生命維持のための閉鎖生態系研究の日本における専門学会として、世界のこの分野の研究をリードしてまいりました。そして、2001年9月に、地球環境に関する問題意識の高まりもあって、宇宙分野での閉鎖生態系研究で培った知見を、地球という閉鎖生態系での人間活動の持続的発展に活用していくために、生態工学会に名称変更をし、徐々にではありますが、この分野でも社会に貢献できる成果がでてきていると自負しております。

  ポスト京都議定書の関係で、昨年の北海道洞爺湖サミットでは、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも半減するという目標を、気候変動枠組み条約締結国すべてが共有し採択されるよう求めることで、G8は合意しました。また、今年の国連気候変動首脳会合では、鳩山首相が、日本は2020年までに90年比で25%削減するという野心的な目標を表明しました。これらは、地球という閉鎖生態系において、今後、人類がどのように持続的な発展を維持するかの議論でもあります。生態工学会でも、物質循環に関する研究や再生可能エネルギーに関する研究、また、リモートセンシングによる地球観測や閉鎖生態系のモニタリングやモデリングなどの研究を通して、これらの問題に貢献できればと考えています。

  一方、生態工学会では、CELSS研究会の時代から、閉鎖系研究施設だけでなく、閉鎖系での作物栽培や養殖などの研究を通して、食料問題にも積極的に取り組んでまいりました。地球を模擬した閉鎖系実験としては、すぐ、アリゾナのバイオスフェアーIIを思い出しますが、最近、園芸施設などでも閉鎖系ということばをよく耳にします。園芸先進国であるオランダでは、湖沼や河川などの汚染を防止するために、グリーンハウス内において、水耕栽培でも、土耕栽培でも、使った養液を回収し、再利用しています。また、化学農薬もできるだけ使わず、天敵利用等により病害虫を防除する栽培法をとっています。さらに、最新の施設では、換気を行わず、ハウス内を完全に閉鎖系にし、クリーンルームでの栽培のような効果を上げています。そして、太陽光のエネルギーを温水に変換し、地下の帯水層に蓄積することにより、ハウスだけでなく、地域社会において、夜間や冬場に再利用するエネルギー創出型グリーンハウスの研究も進んでいます。これらは、閉鎖系養殖などと併せて、閉鎖系研究の一つの実利用の例であると思います。

  このように、生態工学の対象とする分野は幅広く、学会の構成員も元々の宇宙分野だけでなく、工学や農学・水産学、理学、医学など多岐にわたっております。定例の年次大会や研究会、シンポジウムなどを通して、会員の相互交流を深めておりますが、CELSS研究会の発足から20年を過ぎ、また、2011年には、生態工学会の発足から10年を迎えることになります。このため、学会活動の成果を、何らかの出版物にまとめたいと考えています。そして、我々の活動を広く社会に紹介し、温暖化をはじめとした地球環境問題の解決や地域の持続的発展に貢献できればと考えております。また、ご批評を受けながら、10年を一区切りとして学会の今後の発展につなげていければと考えておりますので、今後の会員各位のご協力を宜しくお願いします。


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